【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「……ちょうどよかったです。私もお話したいことがあったので」
私の返事に彼は片眉を上げ、少し意外そうな表情をした。けれど私は自ら車に乗り込み、後部座席の勝又さんの隣に座る。
車内には煙草とコロンの交じり合った強い匂いが漂っていて、あまり居心地はよくない。
「……こんなにすんなり来てくれるなら、人質いらなかったな」
車が走り出すと同時にぼそっと勝又さんが呟き、私は思わず彼の方を向いた。
「人質って……誰のことですか?」
「ん? ほら、きみの友達の……凛子ちゃんだっけ。ピンクの髪が目立つ」
「凛子になにかしたんですか!? 今どこにいるんですか!?」
噛みつくように捲し立てた私に、勝又さんは冷たい微笑をこぼす。
「なにもしてないよ。事務所にいてもらってるだけ。きみが万が一俺の誘いを断ろうとしたら、お友達がどうなってもいいの?って、脅す材料にしようかなと思ってさ」
彼の言い分は明らかに人の道に外れているのに、どうしてそんな平然としていられるのだろう。やはり、勝又さんは根っからの悪人だと思った方がよさそうだ。
……しかし、今さら怖気づいている場合ではない。