【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
昨日とは違うネイビーのストライプスーツに身を包み、祖母と向き合って呑気にお茶なんか啜っているその人はどう見ても……。
「た、尊さん!? あなたがなぜここに……」
尊さんは湯呑みから口を離し、ちらりとこちらを振り返る。その口元には意味深な笑みが浮かんでいる。
「あらあら、お寝坊さんがやっと起きてきた。ほら、座りなさい美織。あなたにもお茶を入れてあげるわ」
のんびりと傍らの急須に手を伸ばす祖母。
いや、お茶を飲んでいる場合じゃないんだけど……。
「お祖母ちゃん、私急いでるの。今日はほら、大事な用があるでしょ……?」
尊さんがこの場にいるせいで、なんとなく結婚前の顔合わせだとは言いづらかった。
しかし、尊さんのことはともかく今大事なのはとにかく十二時の約束に間に合うように身支度を済ませること。それができなければ、両親に盛大に呆れられてしまう。
そして言われるのだ〝私たちをがっかりさせるな〟――と。
「あぁ美織、そのことだけどねえ」
祖母がお茶を煎れる手を止め、尊さんを目を見合わせる。そうして彼とにっこり微笑み合ったかと思うと、信じられないことを口にした。