【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
昔の勝又組は、暴力的、反社会的な手段で収入を得るような組織ではなく、いわゆるテキ屋と呼ばれるような、露天商を生業とする集団だったのだそう。
それが今のような組織に変わてしまったのは、勝又さんの父が組長の座につき、別の暴力団とつながりを持った頃から。
勝又さんの父は次第に犯罪に手を染めることを厭わないようになり、組織の人間にも同じことを求めた。
しかしそこにうまくなじめなかったのが、勝又さんの父親の弟――今日、祖母と一緒にいた、勝又虎之助という男性だった。
彼は組織に名前こそ置いていたものの、行動はともにせずひとり細々と露天商を続けていたのだそう。祖母はなんと、そんな彼と禁断の恋に落ちていたのだ。
「その頃、沖田家の長女としていいところのお坊ちゃんを婿に迎える政略結婚が決まっていたんだけどね。本当は、小さな店で綺麗な飴細工を作ってくれる、虎之助さんのことが好きだったのよ」
「そうだったんだ……」
その頃、今よりずっと根深かった家制度に縛られていた祖母は、決められてた人生を歩み続けることに嫌気がさし、虎之助さんと駆け落ちすると決めたのだそう。
しかし、ふたりが初めて結ばれたその翌日に、沖田家からの使いに見つかってしまい、ふたりの仲は呆気なく引き裂かれてしまうとともに、祖母は決められた相手と結婚をする羽目になった。