【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「母が私にそうしてくれたように……美織にも絶対に、勝又組をはじめ裏社会なんかとつながりを持ってほしくなくて、大切に、時には厳格に育てた。美織は理想通りの健全な娘に育ち、鞍馬君というこの上なく立派な相手との結婚も決まった。これでもうなにも心配いらないと思っていたが……今頃になって、まさかまた勝又組の名を聞くことになるとはな」
疲れたようにため息を吐き出した父がそれきり黙りこむと、再び祖母が勝又組の歴史について説明する。
「虎之助さんは、私を失ったことで荒れてね。その後は弟と一緒になって、悪さを働くようになってしまった。その次第に黒く染まっていく生活の中で、弟が子どもをもうけたんだ。……それが、あの若頭だよ。あの子も可哀想な生い立ちでね」
勝又さんの父は、子の母親であるホステスが育児のために仕事を辞めたいと頼んだが認めず、自分が育てると言って赤ん坊を取り上げた。
しかし、当時組長として忙しくしていた彼が世話をできるはずもなく……部屋に放置気味ままだった赤ん坊を見かねて、同居していた虎之助さんが、親代わりとなって世話をしていたのだそうだ。