【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「昨夜、泥酔したあなたをタクシーで送ってきてくれたこの人に全部聞いたわ。あなたたち、昨夜会ってたそうじゃない。それでこの人ったら美織に惚れ込んでなかなか帰してやれなかったしお酒も飲ませてしまったから、あなたのために顔合わせは後日にしてくれって、両家の親に頼みこんだのよ。だから顔合わせは延期」
「えっ!?」
ふふふ、と口元を手で押さえて意味深に笑う祖母に愕然として、私は思わず尊さんのそばに座り込んで彼に小声で異議を唱える。
「送っていただいたことはありがたいのですが……なんで言っちゃうんですか! 昨夜のこと家族には絶対に知られたくなかったのに!」
すると、尊さんも口元を隠すように手で覆いながら、私の耳元でこう返した。
「……美織の立場が悪くなるようには言ってない。政略結婚とはいえ、妻になる相手に初めて会うのに互いの家族同伴ではやりづらいから、俺が勝手に美織を呼び出して話をした。そういうことにしてある」
「そうだったんですか。なら……」
問題ないか……。一瞬納得しかけて、今の会話に隠れていた衝撃の事実に気づく。
いや、今の会話だけじゃない。さっき祖母もおかしなことを口走っていた。尊さんが両家の親に頼み込んだのなんだのって。