【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~

確かに。父に取り計らってもらえば、遅刻どころか休みを取らされるかもしれない。

でも、事件に巻き込まれたとはいえ怪我をしたわけでもない。心のダメージはなかったとは言わないけれど、尊さんがずっとそばにいてくれたから、意外に元気なのだ。

「私は、朝からちゃんと行きます。連休明けでバタバタするでしょうし、支店長が出勤できるかどうかもわかりません」

「……さすが、真面目だな。そういうところも好きだが、無理だけはしないように」

「はい。おやすみなさい」

「おやすみ」

挨拶を済ませて目を閉じたら、おでこに柔らかい熱が触れた。目を開けると尊さんの悪戯っぽい笑みがあって、彼はわざと声を潜めて囁く。

「お前の実家にいると、たったこれだけでもなんだか悪いことをした気分になるな」

「もう……尊さんてば……」

とてつもなく恥ずかしくて、顔を隠すように布団を鼻の上まで上げると、彼はくすくす笑いながら布団の中に戻っていった。

今日、仕事を終えて帰ったら、また彼とのふたり暮らしが始まる。

私たちを悩ませていた不安も取り除かれ、あとはもう、幸せな結婚を夢見て毎日を過ごすだけだ――。

しみじみとした幸福感と共に睡魔もようやく訪れ、私はほんの数時間の短い眠りにつくのだった。

< 210 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop