【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
しかし、正直な心境を打ち明けて父の機嫌を損ねたくはなかった。
「う、うん。……驚いたけど、うれしい」
控えめな娘を演じ、微笑みを貼り付ける。尊さんもそんな私に優しい目を向けた。
「僕もうれしいです。まさか頭取の娘さんがこんなに可愛らしい女性だとは……昨日会って、すぐにひと目惚れしました」
ちょっと……お互いに演技しているとはいえ、ひと目惚れはいくらなんでも話盛りすぎじゃない?
私はひとり引きつった顔になるけれど、父も他の家族も、私のことを褒められてまんざらでもない様子だ。
「ははは、そうだろう。一応、嫁に出しても恥ずかしくないようにひと通りのことはしつけてきたつもりだから、よき妻になると思うぞ」
「いえ、僕の方こそ美織さんのよき夫になりたいと思っています。美織さん、これからどうぞよろしく」
急に姿勢を正した彼が、私に向かって頭を下げる。
父に負けず劣らず、全く調子のいい人だ。私の家族に好印象を残すために、ここまで徹底して好青年を演じるとは。