【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「いえ……こちらこそ」
彼にならってぺこりと頭を下げると、テーブルの下で彼の手がそっと私の手に触れる。
えっ……?
心の中で声を上げると、いたずらな目をした彼がちらりと私を一瞥し、そのままぎゅっと手を握ってきた。そうして、家族の目を盗んでこっそり私に耳打ちする。
「……笑えるよな。これからよき妻とよき夫になろうとしているふたりが、昨夜のうちにセックス済ませてるなんて」
艶めく声でそんなことを囁かれ、かぁっと顔が熱くなった。
な、な、なにを言ってるのこの人は……! まるで他人事みたいに!
「全然、笑えません……っ」
俯きがちに小声で反論すると、尊さんは声を殺してくつくつと笑う。
もともと乗り気じゃなかった政略結婚だけど、なんだかさらに雲行きが怪しくなってきた。
遊び慣れている尊さんにとっては、結婚すらお遊びの一種なんじゃないだろうか。
だとしたら、私はどうしたらいいの? コロコロ表情を変えるこの人の妻になる自身、全くありません……!
和やかなムードに包まれる食卓で、私はひとり冷や汗を流していた。