【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
「ずっと浮かない顔をして、せっかくの振袖姿が台無しだぞ」
ハッとして顔を上げると、尊さんが無表情で私を見下ろしていた。彼の後ろには、満開を迎えたソメイヨシノの花がそよそよ揺れている。
結納の儀を終え、両親たちは部屋で食事をしているけれど、私と尊さんがいるのは料亭の庭。
食欲がわかず、なかなか料理に手を付けられずにいた私に気づいた尊さんが、気を利かせて庭に連れ出してくれたのだ。
「すみません……。思った以上に結婚というものの重圧に負けてしまっているみたいで」
顔合わせや結納で両家の親たちと顔を合わせるたびに、〝尊さんを支える立派な妻にならなければ〟〝必ず幸せにならなければ〟とプレッシャーを与えられるようで、すっかり心が疲弊している。
「初めて会った時からわかっていたことだが……美織は真面目過ぎるんだよ。結婚に関しても気負いすぎだ。もっと軽く考えればいい」
「軽くって……普通の男女交際ならまだしも、結婚ですよ? もしも失敗するなんてことがあったら、両親になんて言われるか……」