【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
美食遊戯

式の日取りはおよそ半年後、気候のいい十月の大安吉日に決まった。

会場は、スカイイーストホールディングスのグループ企業である都内のラグジュアリーホテル。そこなら、多忙でそこまで式の準備に時間を取れない尊さんに合わせ、色々と融通をきかせてくれるらしい。

婚姻届けは、結婚記念日が紛らわしくならないよう、前もって準備しておき結婚式当日に提出するのがいいだろうということで、私と尊さんの意見も一致した。

日に日に結婚が具体性を帯び、家を出る実感も高まっていくにつれ、私の両親に対する気持ちも変化していった。

時には疎ましく思うこともあったけれど、この年まで健康でなに不自由のない生活を送らせてもらったのは、間違いなく両親のおかげ。晴れて結婚式を迎えるその日までは、残り少ない独身生活を噛みしめながらちゃんと親孝行がしたいな……。

そんな殊勝な気持ちで積極的に家族との会話の時間を持ち、家族団らんを噛みしめながら結婚式までの日々を過ごしていくつもりだったのだけれど――。


「美織、鞍馬さんから昼間電話があったんだけどね。彼、国内から海外までとにかく出張が多くて時間がないから、来週から一緒に暮らせないかって」

仕事から帰宅後、夕食のトンカツを揚げる母の隣でキャベツの千切りをしていた私は、突然そんな寝耳に水の話を聞かされて、危うく指を切り落としそうになった。

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