【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
ただし凛子の家のような自由な雰囲気はなく、父も母も世間体が第一のとにかく窮屈で息の詰まる家。
髪を染めたことがないのも、今夜ここへ来るのに自分の部屋の窓からこっそり家を抜け出してきたのも、厳しい両親に絶対許してもらえないからだ。こんなところの会員になるなんて、もってのほか。
けれど会員と一緒であれば来店するのは可能なので、今日はただ一度きりの冒険をするため、凛子に頼んで連れてきてもらったのだ。
親の言うなりで何の反発もせず生きてきた窮屈な人生を、一度でいいから踏み外してみたい。そんな不真面目な私の願いを、凛子は快く聞き入れてくれた。
黒服の男性に案内されたのは、創作フレンチのレストラン内にある個室だった。
個室と呼ぶにはあまりに広いその部屋は、中央にソファとテーブルのセット、それから夜景の見渡せる窓際に、椅子が二脚が置いてある。
すべての家具や調度品はロココ調で統一されており、まるでお城の一室にでも迷い込んでしまったよう。
その優雅な空間の中央では、スーツ姿の男性がふたり、広々したソファに座りワインを嗜んでいた。