【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
その日は引っ越し作業ですっかり疲れてしまい、夕食は外で食べることになった。
尊さんが私を連れていったのは、マンションから徒歩圏内にある小ぢんまりとしたお寿司屋さん、『かずみ』。
席はカウンターのみで十人も入れないけれど、陶器の花瓶に活けられた季節の花や上質な木材を使っているのであろう和のインテリアに囲まれた店内は、とても趣がある。
尊さんはとりあえず瓶ビールとふたつのグラスを頼んで、それから私に尋ねた。
「さて、なにから食べる?」
「そうですね……今、白身で美味しいのはなんでしょうか?」
目の前のショウケースに並んだネタを見ても悩んでしまい、私はカウンター内の大将に声をかけた。六十代くらいの人の好さそうな職人さんだ。
「今日は真鯛のいいのが入ってますよ」
「じゃあ、それでお願いします」
「大将、俺はウニ」
「あいよ」
えっ。尊さん、いきなりウニを食べるの……?
私の常識ではあり得ない一品目のチョイスに、思わず隣の彼を怪訝な眼差しで見つめてしまう。