【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
彼ときちんと向き合って、彼のいいところも悪いところも知って。
そしていつの日か、運命に流されたんじゃない。親の過干渉から逃げ出す口実でもない。目の前の男性を……尊さんを愛しているから結婚したんですって、言える日が来るように。
「私も努力します。これからふたりで本物の夫婦を目指しましょう、尊さん」
私はベッドの上で正座をし、彼の手を取ってぎゅっと握る。
「……ああ。さっきは怖がらせて悪かった。もうあんな乱暴はしない」
すまなそうに眉を曇らせる尊さんに、私は首を左右に振る。
「私こそ、突き飛ばしてしまってすみません。あの、お詫びと言ってはなんですが……」
私はしばし視線をさまよわせた後、じりじりと彼の方に身を寄せた。それから意を決して、尊さんの頬にチュッとキスをする。
夫婦になるための第一歩、それを自ら踏み出したつもりなのだけれど、いざ行動に移してみたら恥ずかしくて居たたまれない。
唇を離した後も恥ずかしくて目を合わせられずにいたら、尊さんが大きな手で口元を覆いながらぼそぼそ独り言を呟く。
「頬にキス、ぐらいでなにを動揺しているんだ? 俺は……」