【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~

顔を上げ、笑顔で彼にお礼を伝えた。尊さんも微笑んで頷き、それから私の額に唇を寄せて前髪の上から軽めのキスをした。

ぽわん、と顔が熱くなり、胸がドキドキ高鳴った。

「じゃあ行ってくる。俺が恋しくなったら電話しろよ。必ず出るか、掛け直すかするから」

命令口調ながらそんな甘いことを囁き、尊さんは玄関へ向かっていく。

「は……はい。行ってらっしゃい」

たった三~四日の不在で、別に恋しくなんて……なりませんよ。

胸の内でそう呟きつつも、尊さんの一挙一動に翻弄されている自分も感じていた。

キスをされたおでこにそっと触れると、その場所に押し当てられた柔らかな感触が蘇って、恥ずかしさも同時に舞い戻る。

これから夫婦になるんだから、こういうのにも慣れていかなきゃダメなんだよね。今のところ、全然慣れる気がしないけど……。

私はしばらくキスの余韻でぼんやりしていたけれど、やがて自分も仕事だと気づき慌てて身支度を始めるのだった。

< 55 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop