【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
私が固まって否定も肯定もせずにいると、支店長はデスクに肘をついて難しい顔をしながら言う。
「頭取は知ってるの? このこと」
私がいじめられているのは、聞くまでもなく確信しているらしい。それなら別に隠しておく意味もないかと、私は正直に話し出した。
「いえ……。知らせても心配をかけるだけですし、私ももう大人です。低俗な悪口や嫌がらせくらいで業務に支障を出したりはしませんし、父はもとより支店長にご相談するほどのことではないと思っています」
「そうか……。立派だな沖田さんは。わかった、それなら僕から特に皆を指導するようなことはしない」
話しながら、神妙な顔でうんうんと頷く支店長。とりあえず、彼もそこまで大ごとにするつもりはないとわかってホッとした。
「お気遣いいただきありがとうございました。では私はこれで……」
私はとにかく支店長室から早く出たかった。こうして支店長に呼ばれているだけで、頭取の娘だから贔屓されているのでは、などと今ごろ勘ぐられているだろうから。