【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
お辞儀をして部屋から出ようとすると、支店長が私を呼び止める。
「もしも困ったことがあったら、いつでも相談してほしい。僕はまだここにきてそんなに経ってないけど、沖田さんが人一倍努力してるのは見ていればわかるから」
「支店長……はい、わかりました。もしなにかあれば、ご相談させてください」
優しい人なんだな……。前の支店長もいじめには気づいていたけど見て見ぬふりだったのに。
私自身、正しいかどうかは別としても大人の世界ではその対応が普通だろうと、誰の助けも特に期待していなかったし。
でもこの支店長なら、本当に困ったときには頼ってみてもいいかもしれない。信頼できそうな人が上司になってよかったと思いつつ、私は仕事に戻った。
その後、窓口業務が終了する十五時間際に、ある男性のお客さんが融資の相談で支店長に会いにやってきた。
二十代後半くらいだろうか。メタルフレームのスクエア型眼鏡をかけた、涼やかな切れ長の目元が印象的な男性だ。