【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
立ち去ろうとしたところを呼び止められ、足を止めて振り返る。するとつかつか歩み寄ってきた勝又さんが、今までの彼とは別人のような冷たい声音で言った。
「婚約者って……どんな人ですか?」
眼鏡の奥では、さげすむような瞳が私を見据えている。な、なんで急に……?
豹変した勝又さんに詰め寄られると、なぜか、ナイフを首筋に突き立てられたような感覚に陥って、冷や汗が背中を伝った。
「どうしてそんなこと……」
「参考までに聞いておきたいだけですよ。そうだな……簡単な性格でいいです」
「性格……?」
勝又さんがなぜそんなことを知りたがるのか、全く理解できない。しかし、今の彼に逆らったらどうなってしまうのかわからない、そんな怖さもあって、私は必死で言葉を探した。
「……自信家で、傲慢で……でも、その分頼もしくて……あと、ちょっと過保護なひとです」
尊さんの言動を思い返して告げると、勝又さんはおかしそうに声を上げて笑った。
「なんだ、長所より短所ばかりじゃないですか」
「……そうかもしれません。今はまだ」
「今は?」
「ええ。なにせお互いをまだよく知らないものですから……」