【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
ついそこまで言いかけて、ハッと我に返る。
……今私、言わなくてもいいことまで言ったんじゃない?
案の定、勝又さんは意味深に微笑んでこんなことを呟く。
「ふうん、面白いことを聞きました」
不気味な響きに思わずぞくりとして、ますます恐怖が増した。
「も、もういいですよね? 私はこれで……」
そうして逃げるようにギャラリーを後にしたけれど、その途中、背後で勝又さんのこんな言葉が聞こえた。
「またそのうち会いましょう、沖田さん」
そ、そのうちってなんですか? 怖いよ……。もう、ジムには絶対近づかない……!
固く決意してエレベーターに乗り、自分の部屋の前まで来たのはいいけれど、手が震えて鍵がうまく開けられなかった。
「あれ……? もう、ちゃんとしてよ……」
泣きそうになりながら自分を叱咤しやっとの思いで家に入ると、すぐにドアをロックして玄関の床にへなへなと座り込んだ。
「怖かった……あの人、なんなんだろう」
思えば、銀行で見かけた時も、私を相手にした時と支店長を相手にした時とで二面性があった。絶対に普通の人じゃないんだ……。