【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
『あまり寂しいようなら、実家に帰っててもいいんだぞ?』
「……平気ですよ。尊さんが出張が多いのにも慣れておかないといけませんし」
『そうだな。これからも寂しい思いをさせることになると思う。でも、会えない時間が多いからって、夫婦の絆まで希薄になるとは思いたくない。ふたりで一緒に、俺たちのベストなやり方を探っていこうな』
「はい」
尊さんの力強い宣言に、電話だというのに大きく首を振ってうなずいた。
彼と話していると、夫婦というものに明確な形はなく、そのカップルそれぞれの心地いいと思える関係を築くのが大切なのだと気づかされる。
きっとこれから、尊さんと私という組み合わせだけに限った、夫婦のルールがいくつもできていくんだろうな。その過程も平坦な道ではないだろうけど、ふたりの絆を深めてくれるものであると信じている。
『じゃあ、俺は行くから。またな』
「はい、また」
そうして通話が切れると、広いマンションでまたひとりになってしまう。しかし尊さんと話しているうちに、心はだいぶ落ち着きを取り戻していた。
正直、勝又さんのことはまだ怖くてたまらないけれど……このマンションはセキュリティがしっかりしているし、ジムに行かなければもう会うこともないはず。
明後日には尊さんも帰ってくるんだし、気をしっかり持とう。
自分で自分を勇気づけ、ようやく私は立ち上がって部屋の中に入っていった。