【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
耳朶遊戯
翌日はジム通いを止めて部屋で大人しく過ごし、あっという間に尊さんが出張から戻る木曜になった。
昼間、私がいつものように淡々と仕事をしていると、蒔田支店長から彼の部屋に来るようにと内線でこっそり呼び出された。
しかしこっそりと言ったって、電話を取ったのは別の同僚だし、窓口を別の先輩に変わってもらわなきゃならないから、同僚たちにはバレバレだ。
こうも立て続けに呼び出されるなんて……また悪口大会が始まりそうだ。
同僚たちの刺すような視線を感じつつ持ち場を離れて、支店長室で蒔田さんと向き合う。
「あの、ご用件は……?」
話があるなら早く終わらせてくれないだろうかと思っていると、支店長はデスクの引き出しから小さな紙袋を出して、私に差し出した。
「これ、営業先でもらったんだけど……僕はいらないから、沖田さんにあげるよ」
「えっ?」
まったく仕事に関係のない話題に意表を突かれつつ紙袋を受け取ると、中には海外の人気チョコレートブランドのクッキーが入っていた。
とても美味しそうだし私も好きなブランドではあるけど……。この袋をロッカーにしまいに行くには、一度同僚たちのいる場所を通らなくてはならない。
そんなことしたら、いったいこの後なにを言われるか……。