【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~

私は一旦裏に下がって、支店長室に内線をかけた。

応対した彼に私が事情を説明すると、私の期待に反して『ぜひお会いしたい』なんて言うので、結局尊さんを支店長室へ通すことになってしまった。

ふたりがどんな話をするのか気になって仕方がなかったけれど、さっきも先輩に仕事を代わってもらったばかりで持ち場を離れづらく、尊さんの案内は他の人にお任せして、私は仕事に精を出すことにした。

およそ二十分後、尊さんが支店長と共に店舗の方へ戻ってきて最後のあいさつを交わし、店を出て行った。

その時一度も私の方を見ることのなかった彼になんとなく違和感を覚えたけれど、仕事中だし……と特に気に留めずに尊さんの背中を見送った。


三十分ほど残業したあとでいつものように仕事を終え、ロッカー室で着替えながらスマホのチェックをすると、尊さんから一件のメッセージが入っていた。

【話がある。寄り道せずにまっすぐ帰ってこい】

なんとなく不機嫌さを感じるそっけない印象の文面に、胸が騒いだ。私、なにか怒らせるようなことをしただろうか。思い当たるふしはないけれど……。

【わかりました、今から帰ります】

簡単な返事をして、急いで着替えを済ませると銀行を出た。

< 81 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop