【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
両親の教育方針では、ピアスホールを空けるなんてご法度。学生時代にそう言われたきり、自分でも特に開けたいと思うことはなかった。
でも、こうしてプレゼントされると……やっぱりせっかくだから着けてみたいという思いも湧く。
「知ってるよ。初めての夜、耳にもたくさんキスしたからな」
そう言って私の耳朶に手を伸ばした彼。ふにふにと感触を楽しむように触られるとくすぐったさにびくっと肩が跳ね、顔が熱くなる。
「そ……そうですか。でも、知っているならなぜピアスを?」
「うん? 穴なら俺が開けてやればいいかと思って」
平然と放たれた言葉の意味がよくわからず、私は眉根を寄せて聞き返す。
「尊さんが、開ける……?」
「そう。自分ので慣れてるから腕は信用してくれ。もう塞がってるとは思うが、十代の頃は俺も五個くらい開いてたんだ」
「五個……!」
目を凝らして彼の耳朶を観察すると、よく見ないと気づかないレベルではあるけれど、わずかに跡が残っていた。
十代の尊さんはきっと、今とは別の意味で目立つ容姿をしていたんだろう。同じ頃の私と並んだら、ステレオタイプなヤンキーくんと地味子ちゃんが出来上がりそうだ。