【極上旦那様シリーズ】きみのすべてを奪うから~クールなCEOと夫婦遊戯~
尊さんがお風呂から上がった後、私たちは静かな寝室の椅子に座って向き合った。
「ちょっと痛むからな」
「は、はい……ひと思いにお願いします……!」
緊張でガチガチになる私に、尊さんはニードルという注射針のような器具を使ってピアスホールを開けた。
針が刺さる瞬間、恐怖がなかったといえば嘘になるけれど、尊さんはとても手際がよく、ほんの一瞬で済ませてくれたので、不安がっていたほどの痛みはなかった。
そして、きちんと消毒してピンクダイヤのピアスを着けてもらった。穴が安定するまで最低一カ月は、外してはいけないのだという。
「夫婦の証といえば指輪が一般的だが、ピアスを贈るのもいいな。この女は俺のものだって、強く感じられる」
尊さんは私の耳朶にそっと触れ、自分の選んだピアスがそこに輝いているのを満足そうに眺める。その独占欲の滲んだ発言は、私の胸をときめかせた。
尊さんに出会うまで、女性を所有物のように扱う発言をする男性なんて最低だと思っていたのだけれど……彼に言われるのは、不思議と嫌じゃない。
〝彼のもの〟になるのは、とても甘やかな幸せのように感じられるのだ。
ピアスを着けたことで難点があるとすれば、一カ月ほどジムのプールに行けなくなってしまったことくらいだけれど……勝又さんのことがあってからジムにはあまり近づきたくなかったので、むしろジムに行かずに済むいい口実ができたという感じだ。
しばらくの間は、仕事の後はまっすぐ帰って尊さんの帰りを待つ、しとやかな妻でいよう。
ベッドに入った後も、自分の耳に何かついているという慣れない感触になかなか寝付けないでいたため、私はそんなことを考えて眠気が来るのを待つのだった。