一途な執事と甘いティータイム
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「美菜子ーっ!」
「久しぶりだよ、菓乃ー!」
駅前で抱き合うふたり。
夏休みの駅は人で溢れかえっていて、そんな私たちを気にして見る人は誰もいない。
「楽しみだね、海!」
「友達と海水浴行くの初めてで、昨日眠れなかったもん」
「えぇ、そんなに?でも楽しみにしてくれてたのは嬉しいな」
夜も眠れないなんて小学生みたいだなと自分にツッコミを入れる。
でも、それだけ今日という日を楽しみにしていたんだ。
このために、親の仕事も手伝ったし、宿題だって頑張ったし、パーティーだってちゃんと参加した。
少し抜け出したあの一件で、また有嶋に怒られたけれど。
抜け出したことよりも、有嶋に私の姿が見えないから探して欲しいとの連絡が入り、休みを潰された事への怒りが大きいと思う。
ゴールデンウィークの時も確かそうだったはず。
ううん、今は有嶋も家のことも全部忘れてたのしむんだから!
「菓乃?大丈夫?」
ひとりでブンブンと顔を横に振ってしまい、美菜子に心配されてしまった。
「えっ、あ、うん!大丈夫、行こいこ!」
変なところを見られちゃった……
恥ずかしくなって、そんな羞恥心を隠すように、まだ心配そうにする美菜子の背中を押して、駅の改札を潜って行った。