一途な執事と甘いティータイム
「あ、いた」
日が暮れ始める駅前広場のベンチにひとり、座っている有嶋の姿を見つけた。
執事服ではなく、私服姿の有嶋。
どこからどう見ても、やっぱり普通の高校生。
駅前を行き交う人たちはみんな、この人が私の執事だなんて思う人は、誰一人いないだろう。
「お待たせしました」
「…遅い。どれだけ待たせるんだ」
「すみません……」
きっと有嶋がここに来たのは、メッセージが来た時間のはずだから、約1時間の遅刻だ。
「美菜子といる時間が楽しすぎてつい……」
乗ろうとしていた電車に間に合わず、逃してしまったことが今回の遅刻の原因だ。
許してくださいと懇願すると、有嶋は深いため息をつきながらも見逃してくれた。
……というよりは、呆れられた。
そんな有嶋はどこかへ電話をしている。
「はい。勉強後に息抜きをと思いまして近くのカフェにおりますので、図書館ではなくカフェの方にお願いできますでしょうか」
多分、相手は専属の運転手。
学校への登下校は自分で行くとことを有嶋がいるという条件で、車での送迎を免除してもらっているけれど、普段の休みの日は、必ず車での送迎がある。
本当は断りたいのだけど。