一途な執事と甘いティータイム



「あ、いた」



日が暮れ始める駅前広場のベンチにひとり、座っている有嶋の姿を見つけた。



執事服ではなく、私服姿の有嶋。



どこからどう見ても、やっぱり普通の高校生。



駅前を行き交う人たちはみんな、この人が私の執事だなんて思う人は、誰一人いないだろう。



「お待たせしました」



「…遅い。どれだけ待たせるんだ」



「すみません……」



きっと有嶋がここに来たのは、メッセージが来た時間のはずだから、約1時間の遅刻だ。



「美菜子といる時間が楽しすぎてつい……」



乗ろうとしていた電車に間に合わず、逃してしまったことが今回の遅刻の原因だ。



許してくださいと懇願すると、有嶋は深いため息をつきながらも見逃してくれた。



……というよりは、呆れられた。



そんな有嶋はどこかへ電話をしている。



「はい。勉強後に息抜きをと思いまして近くのカフェにおりますので、図書館ではなくカフェの方にお願いできますでしょうか」



多分、相手は専属の運転手。



学校への登下校は自分で行くとことを有嶋がいるという条件で、車での送迎を免除してもらっているけれど、普段の休みの日は、必ず車での送迎がある。



本当は断りたいのだけど。


< 118 / 267 >

この作品をシェア

pagetop