一途な執事と甘いティータイム
私の持っているというのは、試作品だけれど。
だいたい私のところに新作は回ってくるから、私の周りにある化粧品は全てSakuraの物だ。
美菜子の唇を見た時、ピンクの色味がもしかしたらSakuraのグロスかもしれないと思ってはいた。
それにしても、Sakuraでこんなに話が盛り上がるとは思っていなかった。
話も合って、とても楽しい。
美菜子と心から友達になりたいと思った。
ただ、美菜子がこんなにも好いてくれている化粧品ブランド"Sakura"は私のグループが立ち上げたものなのだと打ち明ける勇気はなかった。
もしもその事実を知ってしまったら……
そんなことを考えると恐ろしい。
きっと美菜子は優しいから、酷いことはしない。
そうは思っても言い出すことはできなかった。
私は身を隠してここで生活していくんだと決めたんだ。
こんな地味な格好をしてでも隠し通すんだって。
こんな私と話してくれてありがとう。
隠し事をしてしまってごめんなさい。
その後、定番の出身中学校は?とお互いの話へと話題は移っていったが、私は遠くから転勤でここに来たのだと美菜子に嘘をついた。