一途な執事と甘いティータイム



有嶋は私の腕を固く握って離さぬまま、どこかへ電話をかけていた。



「はい、今菓乃お嬢様を自宅近くで見つけました。えぇ、そちらに戻るには時間がかかりますのでこちらにいます」



電話相手はおそらく私のお父さん。



さっきまで荒れた口調だったのに、今はペコペコしてる。



一瞬にして執事顔になっちゃって。



「もう逃げ出さないように僕が責任もって見ていますので……はい、僕からもしっかりと注意しておきます。はい、失礼します」



数分喋っていただろうか。



身動きの取れない私は、この時間が長く感じた。



「ってことだから戻りますよ"お嬢様"」



「……性格悪っ」



「何かおっしゃいました?"お嬢様"」



私がそう呼ばれるのを嫌いっているのを知っていて、わざと強調させてくる。



有嶋ってこんなやつだったの?



今まで本性は隠してきたってやつか。


< 53 / 267 >

この作品をシェア

pagetop