一途な執事と甘いティータイム
有嶋は私の腕を固く握って離さぬまま、どこかへ電話をかけていた。
「はい、今菓乃お嬢様を自宅近くで見つけました。えぇ、そちらに戻るには時間がかかりますのでこちらにいます」
電話相手はおそらく私のお父さん。
さっきまで荒れた口調だったのに、今はペコペコしてる。
一瞬にして執事顔になっちゃって。
「もう逃げ出さないように僕が責任もって見ていますので……はい、僕からもしっかりと注意しておきます。はい、失礼します」
数分喋っていただろうか。
身動きの取れない私は、この時間が長く感じた。
「ってことだから戻りますよ"お嬢様"」
「……性格悪っ」
「何かおっしゃいました?"お嬢様"」
私がそう呼ばれるのを嫌いっているのを知っていて、わざと強調させてくる。
有嶋ってこんなやつだったの?
今まで本性は隠してきたってやつか。