一途な執事と甘いティータイム
「なぁ、大丈夫?俺の歌にでも聞き惚れた?」
「そ、そそそんなことないからっ!」
「へぇー、そうなんだ」
「だから違うって!!」
このナルシスト執事!
確かに事実だけど、自分で言わないでよね。
ムッとしながらも、有嶋から手渡されたタッチパネルを操作して歌いたい曲を探してみる。
誰しも自分の得意な曲っていうのがあるらしいけど、カラオケに来るなんて初めてのことだから、自分の得意な曲なんてわからない。
だっていつも流れているものを聞くばかりで、音楽の授業以外で歌ったことなんて一度もない。
迷いに迷った末、選んだのはたまに口ずさんでいたラブソングにした。
好きだった少女漫画が映画化された時の主題歌だってことは知っていて、よく音楽アプリで聞いていた。
「その、下手くそでも笑わないでよ」
「別に。今日は楽しめばいいじゃん?」
「……っ」
いつも貶してくるくせに、突然そんな優しい言葉なんてかけられたら調子が狂う。