一途な執事と甘いティータイム
なんて返したらいいかわからない沈黙を破るように私の入れた曲のイントロが流れてきた。
さっきもらったマイクを握り直し、流れるテロップを見つめて、歌い出す。
すごい、声がマイクを通してスピーカーから部屋の中に響いてる。
いつも歌を口ずさんでも、自分の部屋の中では広すぎてこんなに響かないし、外だとすぐに消えてなくなってしまう。
カラオケって、こんなに気持ちいいんだ。
日頃のストレス発散にすごくいいかもしれない。
ひとりで楽しくなっちゃって、有嶋に「俺の番飛ばすなよ」と怒られるくらい夢中になって歌い続けた。
何曲も歌ったせいか、喉はカラカラ。
部屋に来る前にセルフでついできていたコップの水はみるみるうちに無くなっていった。
────プルルルル
「わぁっ、で、電話!?」
有嶋が歌っている途中で部屋の中に大きく鳴り響いた電話の音。
明らかにその音源は、ドアの横に取り付けられた受話器から。
「も、もしもし……」
恐る恐る受話器を取って出ると、歌っていた有嶋は歌うのをやめて笑っていた。
「あはは、変わって菓乃。──あ、はい。延長なしで、はーい」
私にはなんで笑われたかわからない。
「ねぇ、なんで笑うのよ」
理由が知りたくて、そう有嶋に問いかけた。