一途な執事と甘いティータイム
あれから有嶋とは会っていないし、言葉も交していない。
昨日はもう遅いからと、私の言い返しも聞かずに出て行ってしまったから。
今、もしも目の前に現れたら、一発殴ってしまうかもしれない。
そうこうしているうちに、最初の招待客がツヤツヤで真っ黒な高級リムジンに乗ってやって来たのが見えた。
「……ふぅ」
ペシっと頬を叩いて、気合いを入れる。
さぁて、やるか。
「こんにちは。遠いところお越しいただきありがとうございます」
営業スマイルを浮かべながら、挨拶を交わす。
「お久しぶりだね、菓乃ちゃん。ご丁寧にいつもありがとうね」
「いえ、お元気そうで何よりです。父は奥にいらっしゃいますので……」
「そうか。挨拶にでも行ってくるよ、ありがとう」
こんな人ばかりならいいのに。
今のおじ様は、私が小さい頃からよくしてもらっている人。
遊んでくれたこともあって、楽しかった思い出ばかり。
小さい頃も今も変わらず、優しく丁寧で、感謝の言葉をたくさん掛けてくれるからか、いつもいい気分になれる。
最初のお客さんがおじ様でよかった。