気づけばいつも探してた
「もしかして、meeさん?」

バッグにスマホを直すと同時にその声が私の背後から響いた。

今、私のことを【mee】って呼んでくるってことはその相手は【sho-】さんしかいないよね。

この場所に偶然にも居合わせているというsho-。

私は恐る恐る後ろを振り返る。

「初めまして。sho-です」

長身で爽やかな笑顔を向けている彼は、少しも悪びれた様子もなく一眼レフを片手に立っていた。

サラサラの前髪が風に吹かれてなびいている。

アーモンド型の二重の目が優しく微笑んでいた。

もっとオタクっぽいイメージを抱いていた私は、まさかのイケメンにどう返していいのかわからず彼から視線を背け、必死に言葉を探す。

明らかに戸惑っている私に彼は少し首を傾げながら眉間にしわを寄せる。

「ひょっとして声かけてほしくなかった?」

ええ。もちろんかけてほしくなかった。

できれば、SNSだけでのお付き合いでいたかった。

あまりに嬉しそうに笑っている彼に黙ったままあいまいに頷く。

「俺、meeさんの記事がすごく好きで、ずっとどこかで会えたらいいなって思ってたんだ。前日、meeさんがこの場所に来るってアップしてたから俺も慌てて来たんだけど」

「そうなんですね。SNSの記事を見て下さってるのはありがたいけれど、私、こういうSNSやってるって知人にも言ってないし、この先誰にも言いたくないと思ってるので、申し訳ないけれど今日会ったことは全て忘れて下さい。私の顔も含めて」

「忘れられないって言ったら?」

「は?」

怪訝な顔で彼を見上げるとsho-は不敵な笑みを浮かべて私を見下ろしていた。
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