気づけばいつも探してた
「衝動が抑えられる間は俺も大丈夫だから」

「ん?」

「さっき俺余計なこと言っちゃったけど、要は今はまだ何も問題ないってこと」

「そう」

時々、翔って理屈っぽくて敢えてまどろっこしい表現を使う。

これも、今までは変な奴、くらいにしか思ってなかったけれど、彼が医者っていう事実を知ってようやく合点がいった。きっと思考回路が私達凡人とは違っているからってことなんだろう。

翔もそう言ってるんだから、今は深く考えるのはやめにした。

彼が大丈夫だって言ってるんだからきっと大丈夫なんだろう。

「みーちゃん」

後ろでようやく目が覚めた祖母が私を呼ぶ声が聞こえた。

体を後ろに向け「おばあちゃん、起きた?」と笑いかける。

ほんと、絶妙のタイミングのお目覚めだ。

「すっかり寝てしまってたけれど、もうすぐ着くのかい?」

「うん、さっき大阪まで十キロって書いてあったから、もうすぐ……だよね?」

そう言いながら、念のため翔に確認する。

「ああ。じきに着くよ。おばあちゃん、体調はどう?」

翔はいつもの穏やかな表情で祖母に尋ねた。

「ああ、全く問題ないさ。おかげさまでいい夢みてゆっくり眠れたよ」

「それはよかった」

翔はそう言って楽し気に笑い、高速の出口の方へウィンカーを出し左にハンドルを切る。

高速を降りるとほどなく空港に着いた。
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