気づけばいつも探してた
「今習っているフラワーアレンジメントの先生は、よくホテルやこういったレストランの花を生ける仕事もされていて、二週間前、突然先生のお仕事のアシスタントするよう頼まれたんです」

「いきなりアシスタントって、すごいじゃない?まだアレンジメント初めて1か月ほどしか経ってないのに」

「そうなんです。私よりもずっと長く続けていらっしゃるメンバーの方もいるのに本当に私で大丈夫なのかと思ったんですが、先生がどうしてもと言われるので、ホテルに生ける花のアシスタントとして一緒に行かせてもらいました。その時、大きな花器と小さな花器が二つがあって、いきなり先生に小さな花器に好きなように生けなさいって言われて……」

「それって、アシスタントじゃなくて生ける側だよね?」

「はい。でも、『萌ちゃんなら大丈夫』って先生に言われたら厚かましいと思いつつもやってみたいっていう気持ちになってしまって……小さな花器に花を一つ刺した瞬間、夢中になって一気に仕上げることができたんです。こんなに何かに没頭したことなんて今までなかったから自分でも驚きました」

「先生は見る目があったのねぇ。萌はきっとその道に進むべきだったのよ。それで、この店の花も先生に頼まれたの?」

「……お話のところ申し訳ないんですけれど、ドリンクのご注文はよろしいでしょうか?」

その時、申し訳なさそうな声で私たちの横に立っていた若い男性店員が頭を下げた。

「あら、ごめんなさい!すっかり注文忘れていたわ」

私と萌は、目を合わせてプッと吹き出すと、慌てて赤ワインのボトルと、萌がおすすめだと言うオードブル盛り合わせとマルゲリータのピザを頼んだ。


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