気づけばいつも探してた
送っちゃった……。

すぐに既読にならないところを見たら、また仕事なのかもしれない。

未だ見ていないことに、少し安心してスマホをバッグに直した。

普段送り慣れているような文章なのに、少しずつ変わっていく翔との関係がそのたった一言の意味をも変えていく。

電車に揺られる自分の姿が窓に映る。

私、こんなに疲れた顔してたんだ。

そりゃ、萌も心配するはずだよね。

頬に手を当て、ニッと口角を挙げて笑ってみた。

隣に立っていたおじさんと窓越しに目があい、慌てて何事もなかったように口をきゅっと結んだ。

駅に着き、下車したホームでもう一度スマホを確かめてみる。

でも、まだ既読にはなっていなかった。

今度は安心というより、寂しい気持ちになる。

私は、翔という人物をとてもよく知っているはずなのに、実は肝心なところは全く知りえていないのかもしれない。

もっと、彼のこと知りたい。

……知ったところで何か変わる?

その言葉は翔にも何度か言われたけれど、変わるかどうかが問題じゃなくて、知ることに今は意味があるような気がしていた。

さっき送ったLINEのメッセージは私にとっては一つの決意。

彼のことを『知る』という第一歩。

翔には「大げさだな」って笑われそうだけど。


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