気づけばいつも探してた
翔の実父は、彼が7歳の時に病気で亡くなる。

弁護士だった実父の学生時代からの友人が今の父親だそうだ。

翔の城好きの原点は亡くなった父の影響。

彼の父もまた日本の城を見て回るのが趣味で、いつも幼い翔を連れて旅に出た。

父の夢は日本の城を制覇した後、海外の城を翔と一緒に観に行くことだった。

その願いも空しく、実の父は病に倒れた。

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『だから、俺が父の夢を叶えようと思って城を渡り歩いてるんだ』

そんな話をまるで夢の中のような、現実身のない空気の中で聞いていた。

すぐに翔の話に反応できない。

それくらい、私にとっては、想像を絶するほどの道のりを経てきた彼の姿がそこにあったから。

それなのに、彼はこれまでの苦労も微塵も感じさせない他人事のような話し方で私に伝えるんだもの。

「翔は……いつも機嫌いいし、怒ってるところも苦しんでいるところも見たことないんだけど、今まで私が見ていた翔は本当の姿なの?」

『きつねに化かされたような言い方するなよ。俺だって怒ることくらいあるさ』

翔は電話の向こうでからからと笑った。

「私も、あまり他人には自分のつらい姿を見せるのは好きじゃないけど、翔がいて全部受け止めてくれたから随分救われてるのよ。だけど、翔は誰かに吐き出したりしてるの?」

つい数時間前、同じようなことを萌に言われたっけ。

ふとそんなことを思い出しながら尋ねる。


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