気づけばいつも探してた
「なぁ、美南」

ベンチから見える松山の街を見つめながら翔が静かに私を呼んだ。

コップに口をつけながら「うん?」と返す。

「お前、その彼と結婚するのか?」

……結婚。

竹部さんとの結婚なんてあるわけがない。

だって年明けに別れを告げられることになるだろうから。

結婚しない、って答えたら、翔はどういう顔するんだろう。

きっと答えに困るんだろうな。そう思ったら、本当のことが言えなかった。

「ないとも言えない話だけど、それが何か?」

「ふぅん……そっかぁ」

尚も正面の景色から目を逸らさない翔の横顔に不安になって尋ねてみる。

「それだけ?」

その先の言葉に期待しなかったわけじゃない。

必要以上に騒ぐ胸をぎゅっと抑えた。

「美南が幸せならそれでいいや」

翔はそう言うと、ジュースを一口飲みようやく私の方に顔を向けフッと笑った。

ドクン。

二人でいるのに何とも言えない孤独を感じて、今度は私が視線を正面に移す。

翔と二人でいるとき、孤独なんて感じたことなかったのに。

「……本当にそれだけ?」

松山市街はほんのり傾いたオレンジの日が差し込み、ところどころビルの窓が反射して光っていた。

小さくつぶやいた私の問いかけに、翔は何も答えずジュースを一気に飲み干す。

「お前も早く飲めよ。駐車場まで一時間くらいかかるだろうからそろそろ降りるぞ」

「うん。わかってる」

素直にうなずきたくなくて、口調が少しきつくなった。

残っていたみかんジュースを私も一気に飲み干す。だけど、その味は酸味しか感じられなかった。

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