気づけばいつも探してた
そして、意地悪な口元でにやっと笑うと前のめりになり私の方に顔を近づる。

「俺のキス、彼よりもよかった?そりゃ簡単に忘れられないか」

一気に顔が沸騰する。

「な、なに言ってんの!ばっかじゃない?」

思わず大きな声が出てしまったので、近くのテーブルの家族が驚いた顔でこちらを見た。

翔が私の代わりにその家族に頭を下げ、カレー皿に置いたスプーンを再び手に取る。

「んなわけないか」

そう呟き平然とカレーを口に頬張った彼をきっとにらむ。

「そうよ、そんなわけないわよ」

残っていたオレンジジュースをぐっと飲み干し、「おかわり取ってくる」と言って席を立った。

ジュースのブースに向かいながらも、顔が熱くて心臓もバクバクしてる。

どこまで人をおちょくったら気が済むのかしら。

彼よりもよかった?だなんて。

失礼にもほどがあるわ!

だけど。

今勢い余って「そんなわけないわよ」なんて言ってしまったけれど、あんなキスは正直初めてだった。

全てがトロトロに溶けてしまいそうなキス。

竹部さんよりもずっと……愛を感じるキスだったんだもの。

それなのに、わざと私を怒らせるみたいな意地悪な言い方して。

わざと……なの?

『ずっと、好きだった……』

そのかすれた彼の声がずっと私の頭の中で何度も聞こえる。

あの声と言葉は冗談には感じられなかった。

忘れろだなんて、そんな簡単に忘れられるはずないじゃない。

グラスにグレープフルーツジュースを注ぐ。

勢いよく入ったジュースは泡立っていて、ちっともおいしそうに見えなかった。

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