気づけばいつも探してた
「別に何もないわ」

「それならいいんだけどねぇ。それはそうと翔さんはあれから元気にしてるのかい?」

「翔?ああ、うん多分ね」

「多分ねって、またつれない言い方するじゃないか。せっかくおばあちゃんも退院したし、うちで一緒にご飯でもご馳走したらどうかなと思うんだけど?」

「うん。そうだね、お世話になったし。でも最近忙しいみたいだからどうかなぁ」

まだ翔にも普通の顔して会う余裕はない。

松山から帰ってから、年始の挨拶LINEが来たっきり特に何も連絡はとっていなかった。

「忙しいならしょうがないけど、おばあちゃんもまた会いたいって言っておいてくれ」

祖母は優しく微笑むとみかんを食べながらテレビに顔を向けた。

ほんとにそうなんだよね。

祖母も母もずっとあらためてお礼がしたいってずっと言ってる。

年が明けたら、なんて延ばし延ばしにしていたらいつの間にか年が明けていた。

キッチンで洗い物を終えた母がエプロンで手を拭きながらやってきて、私の隣にドンと座る。

「おばあちゃんの言う通りよ。いつまでお礼を先延ばしにするつもり?あなたよりもお母さんたちが失礼な立場になってるのわかってる?」

「わかってるわよ」

「じゃ、今ここで電話しなさい」

「今?!」

母も相変わらず唐突だ。

「丁度年も明けたしお母さんからもご挨拶したいわ」

「お母さんはいつだっていきなりすぎるの。ほら、もうこんな時間だし」

「こんな時間てまだ夜の七時半じゃない。お正月二日目だしお仕事もお休みなんじゃない?」

「さぁ、それはどうだか……」

食いつくように私を真横から凝視してくる母から逃れるすべが思いつかない。

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