気づけばいつも探してた
言えばよかったのかな。

翔に「最近変わりない?」って尋ねられた時。

あなたのお兄さんからプロポーズされたって。

だけど、翔のことが好きだからプロポーズは受けないって……。

はぁ~。やっぱり無理だ。

言えない。

こんなこと言ったら絶対翔は困るにきまってる。

なんだか妙に緊張したせいか喉が渇いちゃった。

自分の部屋を出て、一階のキッチンに向かう。

リビングに入ると、母が祖母とテレビを見ている背中が見えた。

「お母さん」

母はテレビに顔を向けたまま「ん?」と答える。

そして、番組に出ているお笑い芸人達の会話を聞いてケタケタと笑った。

私はそんな母の後ろを通り過ぎキッチンでコップに注いだ水を一気に飲み干す。

「翔からさっき電話があったんだけど」

もう一度母の方を向いて言った。

水のおかげで渇いた喉はすっかり潤い、かすれていた声はクリーンになる。

「え?翔さん?」

さっきまでテレビにくぎ付けになっていたというのに、【翔】という名前を聞いた瞬間に私の方に顔を向けて口をにんまりさせた。

「うん。翔は土曜日なら都合大丈夫みたい。最近忙しくてなかなか時間が取れないらしくって。お母さんとおばあちゃんにくれぐれもよろしくって」

「そうだったのねぇ。忙しいのに申し訳ないわ」

そう言いながらも嬉しそうな様子の母は車いすでうとうとしている祖母の肩に手を置き、土曜日翔が来ることを伝える。
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