気づけばいつも探してた
祖母も瞼を上げると、垂れていた首を起こし「そうかいそうかい」と言って目を細めて頷いた。

「で、お母さんは土曜日大丈夫?」

「もちろんよ。それにしても、翔さんにはどんな料理でもてなしたらいいかしら?」

母は腕を組み、考えるような仕草をして私に顔を向ける。

「好き嫌いはないから、お母さんの得意料理並べたらどう?」

「得意料理って?」

「そうねぇ。例えばロールキャベツとか」

母のロールキャベツは一つがとても大きくて、トマト風味のスープでじっくり煮込む。ミンチを包んだキャベツがトロトロに口の中で甘く溶けていくんだ。私にとってはどんな高級店にも負けない絶品料理だと思っている。

「ロールキャベツね」

母は電話機の横に置いてあるメモを手に取り、ボールペンでさらさらと献立らしきものを書き始めた。

「ロールキャベツメインで付け合わせ考えてみるわ」

久しぶりに母のウキウキした表情を見たような気がする。

祖母にしても、母にしても、本当に翔のこと気にいってるのね。

たった一度しか会ってないっていうのに。

瞬時に人の心を惹きつけるのは彼の特技かもしれない。

私も、初対面の後なぜだかすぐに彼と連絡を取っていたもの。

ふと、あの長野で翔と初めて出会った時のことを思い出して一人で笑ってしまう。

まさか、こんなに長い付き合いになるなんてあの時は思いもしなかった。

これが縁っていうものなのかしらね。
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