気づけばいつも探してた
翔と祖母、そして母と私の四人で囲む食卓は驚くほど和やかで違和感がない。

初めは緊張気味だった翔も、よく笑い、「おいしいおいしい」と言ってよく食べた。

料理を褒められた母は上機嫌で、いつもより声のトーンが明るい。

年のせいか最近表情が強張っていた祖母も、翔の前では少女のように表情がくるくると変わった。

翔って、本当に不思議な人。

普段見ない彼の額がとてもかわいくて、思わず目がいってしまう。

時々こちらに向ける翔の視線にドキドキしながらも、私も何度も大きな声で笑った。

翔とずっとこうして一緒にいられたら、もっと楽しいのに。

皆が幸せな気持ちになれるのに。

それなのに、時間は刻々と過ぎていく。

食事が全て終わり、デザートに翔が買ってきてくれた老舗料亭のプリンロールケーキを頂いた。

「これ、クリームの代わりにプリンが巻かれているのねぇ」

母が感心した様子でケーキを乗せた皿を自分の目線まで持ち上げ色んな角度から眺める。

「これなら柔らかいからおばあちゃんも食べれるわ」

そう言って、母は祖母の手にケーキ皿を持たせる。

きっと翔は祖母も一緒に食べれるように選んでくれたんだ。

ふわふわの黄色いスポンジにスプーンを当てると力を入れなくても中央のプリンまで簡単に切ることができた。

「おいしいねぇ」

祖母は翔に微笑み、ケーキを味わっている。

「よかったです」

翔は少し恥ずかしそうに笑い、自分もケーキを口に入れた。


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