気づけばいつも探してた
「ただ、自分が手術に執刀するまでには至ってないみたい」

美由紀は上唇を噛んで首を横に振る。

やっぱり……。

「だけど、これからは新しい脳神経外科の治療研究と若手の指導に当たるって意気込んでたわ」

そう言った彼女の瞳は淀むことなくしっかりと前を向いていた。

少しも、その事実を悲観的に受け止めていないことがわかる。

きっと竹部さんも新しい自分を受け入れ、美由紀とともに進みだしたんだ。

「竹部さんは元々何をとってもレベルが高いから研究方面も指導方面でもトップにのし上がりそうだね」

私も笑顔でそう返す。その言葉に嘘はない。

「じゃ、また近々飲みに行こう!美南の近況報告も聞きたいし」

美由紀は私に目配せすると、後ろ髪を軽やかにはずませながらフロアを後にした。

前よりも随分明るくなったなぁと思う。

竹部さんと一緒にいられるようになって本当によかった。

柱にかけられた時計に目をやると、午前九時半を指している。

そろそろ飛行機が到着した頃かな。

翔は竹部さんの手術を見届けた後、すぐに延期していたアメリカに立った。

一か月、マイアミの大学病院に赴任するための準備や研修を行い、一旦日本に戻ってきたけれど、またすぐにマイアミに本格的赴任するために向かう。

せっかく、二人の気持ちを確かめ合ったっていうのに。

でも、それを引き止めることは私にはできない。

翔が今更マイアミ行をキャンセルすることはできないことくらいよくわかっていたから。

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