気づけばいつも探してた
「ずっと俺のそばにいてほしい」

「あの、それって……?」

口の中に残っていた割と大きなかき揚げをゴクンと飲み込んだ。

「良きときも悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、ともに歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで……そばにいてほしいって言えば伝わる?」

翔の目はまっすぐ私の目を見つめている。

居酒屋の喧騒が、一層彼の神聖なフレーズをリアルに切り取った。

これはひょっとしてプロポーズなんだろうか。

誠実な翔らしいと言えばらしいけれど、なんてまどろっこしいのかしら。

お酒のせいか彼の瞳が潤んでいる。

いつも冗談ばっかりだから、本心かどうかわからない。

思い切って翔に詰め寄った。

「もっとはっきり、わかるように言ってもらえない?」

言いながら自分の頬が緊張で強張っているのがわかる。

翔は大きく息を吐き、前髪をかき上げると私の方にきちんと体を向けて言った。

「美南がそばにいない人生は考えられない。結婚して下さい」

自分で振っておいたものの、こんな居酒屋のカウンターで言うセリフじゃないよね?!

カウンターに立っている大将の視線を感じてちらっと見ると、にんまり笑いながら魚をさばいている。

思いっきり大将に聞こえてるじゃない!

恥ずかしすぎる、こんな場所で返事伝えるなんて。

肝心の翔は、こんな状況に全く気にする様子もなく緊張した眼差しを向けたまま私の返事をじっと待っている。

なんだか、ふっとこの状況に笑いが込み上げてきた。

口を押えてうつむき、声を殺して笑う。

「おい、なんだよ?」

翔の声がする。

私はこの声の主がやっぱり好きだ。

居酒屋でプロポーズしてくるような彼も大好き。

自分でもわからないけれど、なぜだか笑いながら涙が溢れて止まらなくなる。

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