気づけばいつも探してた
涙をハンカチで拭いながら、心配そうな顔向けている翔の目をしっかり見つめて言った。

「はい……ずっと翔のそばにいさせて下さい」

その途端、彼の緊張していた目が和らいでいき、額に手を当て天井を見上げた。

そして、もう一度満面の笑みで私の方に向き直る。

「今、俺人生最大級に幸せだ」

「私もよ」

二人、潤んだ目で見つめあう。

大好きな人からプロポーズされるってこんなにも幸せな気持ちになるんだ。

これから先の人生もずっと一緒にいられる喜び。

かけがえなのない最高の約束。

「腰が曲がるまで二人で世界中の城巡りしよう」

「いいわね」

二人で手を繋ぎ世界の城を回る姿がはっきりと目に浮かぶ。

その時、カウンターの向こうから大将の腕がにょきっと出てきて、目の前に大ジョッキが二つ置かれた。

「すまない、聞くつもりなかったけど聞こえちまった。とにかくおめでとう!これは俺からのサービスだよ」

一部始終をきっと心配して聞いていただろう大将の目は心なしか潤んでいる。

「ありがとうございます」

私たちは目じりにたくさんの皺を寄せて微笑む大将に礼を言うと、大ジョッキグラスを合わせ、見つめあったままグラスを口につけた。

こんなにおいしいビールも初めてだ。

上唇に白い泡をつけた翔がこちらに笑顔を向けて言った。

「こんなにおいしいビールは初めてだよ」





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