気づけばいつも探してた
19.あなたがいれば
19.あなたがいれば

翔はまたすぐにマイアミに帰ってしまうので、プロポーズを受けた週末、早速二人で私の家族に結婚の報告に向かった。

父は初めて対面する翔にどういう表情していいのかわからず最後まで難しい顔をしていたけれど、母と祖母にいたっては、両手を取り合って「よかったよかった」と私以上に喜んでいたんじゃないかしら。

そして、祖母が私の手を力強く握り締めて言ってくれた。

「もっと長生きして、あなたたちの孫を抱かせてもらわなくちゃね」



それから月日が流れて半年がたつ。

竹部さんは、後輩の育成に励む傍ら脳神経外科の研究員としてアメリカと日本を行き来し忙しい日々を送っている。

右手はまだ少し麻痺が残っているけれど、いつかまたメスを握れる日を胸に秘めリハビリも続けていた。

彼があきらめずに立ち向かえるのは、きっといつもそばで美由紀が支えているから。

変わらず仲がいい二人は、最近一緒に暮らし始めたらしい。

そんな美由紀に結婚すると伝えたら、目に涙をいっぱいためて抱きしめてくれた。

「美南が私達にそう言ってくれたように、あなたが幸せになることが私達の一番の願いだった
んだ」

そして、少し頬を染めて恥ずかしそうに続ける。

「そういえば、将来、美南と私は義理の姉妹になるかもしれないわね」

彼女も今まで以上に輝いている。眩しいくらいに。



萌は私の挙式のブーケを作らせてほしいと買って出てくれた。

ますます腕を上げ、今や師匠の一番弟子になっている萌は将来自分の店を構えるのが夢らしい。

頼りなげに揺れていた三つ編みが今では懐かしく思える。

「私の美南さんのイメージです」

そう言って作ってくれたのはオレンジと淡いピンクのスイトピーとマーガレットがぎっしりと詰まっているビタミンカラーのブーケ。

「これからは、旦那様だけに元気を届けて下さい。私も美南さんみたいに誰かに元気を与えられるような花を届けていきます」

萌はそう言って泣くんだもの。

私も思わずプーケを手渡してもらった途端もらい泣きしちゃった。



あ、そうそう忘れちゃいけない。

株主総会の会場に飾られた花の前で珍しく立花さんが足を止めた。

「いつものフラワーショップと変えたの?今年はとてもきれいだけど」

そう尋ねてきた立花さんに私はにんまり笑って答えた。

「そう、きれいでしょう?今年は若葉萌さん個人に頼んだんです」

その直後の立花さんの驚愕した表情が今も目に焼き付いて離れない。

あの顔を思い出すとまるで自分のことのように誇らしい気持ちになる。


*********************

初秋、私たちは結婚した。素敵な家族と仲間に囲まれて。

そして、挙式を終えた足で新婚旅行に向かう。

場所はドイツ。

有名な古城がたくさんあるドイツだから、迷わず二人でそこに決めた。

ノイシュバインシュタイン城、ハイデルベルク城、ホーエンツォレルン城……。

行きたい城がありすぎて、どこから行くか迷ってしまう。

朝、ホテルで入念に今日向かう予定の城への行き方を翔と相談していた。
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