気づけばいつも探してた
市街地図を広げて路線を指でなぞる。

「ここまでは電車でいけるんだけど、この先は何か交通手段はあるのかな」

「あるさ。有名な城だよ?何とかなるって」

「いい加減ねぇ。何とかなるなんて。ここは日本じゃないのよ」

「言っとくけど俺も医者だからな。ドイツ語は少なくとも美南よりよく理解してるつもりだ。辿りついた先で現地の人に尋ねるのが一番だ」

「なんだか上から目線で嫌な言い方!それに、尋ねるなんて言ったってそうタイミングよく現地の人を掴まえられるかどうかなんてわからないわ」

「たくさんいるさ。ドイツの人は皆親切だよ」

「確かドイツに来るのは初めてじゃなかった?まるで何度も来たことがあるような言い方ね」

式と長時間のフライトの疲れがたまっているのか、互いにイライラしていることに気づいていた。

かといって、ここで私が引き下がれるわけもなく、両腕を組んでぷいと翔から顔を背けた。

「おい、怒ったのかよ。こっち向けって」

「もういい。勝手にすれば」

「美南!」

そう言っていきなりぐっと腕を掴まれ彼の胸に引き寄せられる。

翔の顔がすぐ間近に迫っていた。

「ごめん、言い過ぎた」

そう言った彼の目が一瞬野生の色に変わる。

考える間もなく、私の唇は彼に塞がれていた。

朝から??

今から城に向かわなくっちゃ……

だけど、彼は獲物を捕らえたライオンのように私を強く抱きしめ唇を離さない。

むしろ、甘い感度を上げて、私の意識をトロトロに溶かしていった。

ようやく熱いキスと抱擁から逃れた私は荒くなった息遣いを深呼吸で治め、冷静に彼の目を見て言う。

「そろそろ行かなくちゃ間に合わないわ」

「いや、もう少しだけ余裕あるさ」

翔はニヤッと笑うと、そのまま私をベッドに押し倒した。
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