気づけばいつも探してた
「でも、どうして別れちゃったの?母じゃないけど、私もてっきり結婚するんだろうなって思ってたのに」

「う……ん。私には荷が重いかなって。彼と私のギャップがありすぎたの」

「ギャップ?」

「要は不釣り合いってこと」

美由紀は寂しそうに微笑むとロールケーキを一切れ口に入れた。

彼氏のことは詳しくは聞いてないから、どう不釣り合いなのかはわからない。

ただ、美由紀が幼い頃からずいぶん苦労していたから、そういう境遇を理解しえないような立位置の人なんだろうか。

「美南も知ってると思うけど、私の父が自分の会社を倒産させて多額の借金を背負ってたじゃない?母が必死に働いて少しずつ返していってはいるけれど、未だ全て返済しきれてないの。私も実は背負ってるんだ、その借金」

「え?そうだったの?」

「中小とはいえ、それなりに地元では名高い鉄工所だったからね。従業員もたくさん抱えてたし。父は絶対従業員を不幸にさせたくないって、最後の一人まで面倒みたの。母もその考え方に賛同していたから結局負債はどんどん膨らんでとんでもないことになっちゃってたみたい」

そうだったんだ。

あんなに華やかな彼女が裏ではそんな苦労を抱えていただなんて。

「抱えた借金はすごいことになってしまったけど、私も父の意思を尊重してる。だからできるだけ父の支えになりたいと思ってるんだ」

「別れた彼は美由紀が借金の肩代わりをしてるって知ってたの?」

美由紀は頬に落ちてきた髪を耳にかけなおすと、私の方を見て寂しそうに笑い首を振った。
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