気づけばいつも探してた
「竹部さん、いつも忙しい人だね」

私は頬杖をついている美由紀の真似をして自分も頬杖をつく。

「そうね。外科医のホープだから」

美由紀は見つめ返す私から目を逸らす。

「お医者があんなに忙しいものだなんて思いもしなかったわ。前付き合ってた彼氏はサラリーマンだったから、週末はしっかり会えたし、デートの途中で放り出されることもなかったし」

「放り出されるってまたひどい言い草ね」

「だって、毎回よ、毎回」

「出来る医者って証だわ」

「付き合っていく自信ないかも。私結構これで寂しがり屋だからさ」

「私は、美南と竹部さんは合ってるって思うんだけど」

美由紀はいたずらっぽく笑いながらティーカップを傾けた。

「どこが?」

「ちぐはぐなところ」

「だめじゃん!」

私は頬を膨らまして口をとがらせる。

「最近の男女の相性のデータでは遺伝子の形が違えば違うほど相性がいいんだって」

「なんなのそれ。自分と対照的な人の方が相性がいいってこと?」

「そういうこと」

「そうなのかなぁ」

「うん、そうなんだって」

私には正直わからない。

自分と相性のいい男性ってどんな人なのか。

体の相性がいい人っていうのも一理あるけれど、人間一緒に生活していくのにそれだけじゃだめだし。

美由紀のいうように自分とタイプが違う人っていうのは、確かにあきないし刺激もあるけれど、なんだか疲れる。

「そのデータがどういうデータかわかんないけど、相性って一緒にいて疲れない相手が一番いいんじゃないかなぁって思うんだけど」

「え?じゃ、美南にとったらあの男友達、翔くんだっけ?翔くんがいいってことになるじゃない?」

へ?

慌てて頭に浮かぶ奴の笑顔をかき消しながら、両手をブンブン左右に激しく振ってみせる。

「違う違う。翔はまた別物。男女を超越した友達だもの。親友に恋したりしない」

「ふぅん、そういうものなのかな。私は美南みたいに親しい男友達がいないからよくわからないけど」

そうだよね。

確かに私と翔の関係は変わってる。

二人きりでいたって、間違いが起こることはないって断言できるもの。

きっと翔だって同じはず。だからこうして3年も一緒に過ごしてこられた。
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