気づけばいつも探してた
「じゃ、竹部さんとは別れちゃう可能性もあるわけ?」

美由紀はロールケーキをフォークで丁寧に切りながら尋ねる。

別れる、かぁ。

正直、付き合ってるっていう感覚も乏しいのに別れるっていう想像ができるはずもなく。

だけど私にはもったいないくらいすごくてかっこいい男性。

こちらが振られるのは致し方ないとして、自分から振るなんてことは相当もったいないことだよね。

「別れるとか、今はまだそんなことまで考える余裕もないかも。はじまったばっかりだし、これから竹部さんのこと色々知っていくんだろうから」

「それもそうね」

そんな曖昧な言い方で納得したかどうかはよくわからないけど、美由紀の表情から私のこの微妙な気持ちは察してくれたような気がする。

紅茶を二杯目カップに注いだ時、母が買い物から帰ってきた。

「今日はすき焼きよぉ。奮発していっぱい牛肉買ってきちゃった。美由紀ちゃんも一緒に食べて!」

母はたくさん詰め込んで重たそうな買い物バッグを両手に持ってキッチンに向かう。

さすがにそんな母を見て見ぬふりもできず、私もキッチンに向かい食材を冷蔵庫に入れるのを手伝い始めた。

「おばさん、今日はこの後ちょっと予定があって、せっかく用意してくださったのにごめんなさい」

母は明らかに残念そうな顔をして「そうなのねぇ」とため息を一つついた。

「そりゃそうだよ。晩御飯一緒に食べてもらうなら先約入れとかなくっちゃ。美由紀はモテるからすぐ予定埋まっちゃうのよ」

すかさず美由紀のフォローを入れる。

「普段は暇なんですけど、今日の夜だけは珍しく予定が入っちゃったんです。本当に申し訳ありません」
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