気づけばいつも探してた
「そう、残念だけど仕方ないわね。また今度来る時はゆっくりいらっしゃいな」

「はい、ありがとうございます」

美由紀はすまなさそうな表情で頭を下げた。

今日は、最近仕事で忙しくてなかなか二人でゆっくり会えなかった私のために、美由紀も忙しい中わざわざ家まで顔見に来てくれたんだ。

「そうそう、おばあさまの具合はあれからどう?」

美由紀がまだ湯気の立つティーカップを冷ましながら私に尋ねる。

祖母はずっと入退院を繰り返していて、あまり今は調子がよくない。

結局、姫路城も行けないままだった。

少しでも回復したら一緒に行こうと思っていたけれど、祖母は長期の入院で足腰が弱ってしまい歩くこともままならない状態になってしまっていた。

美由紀にそんな状況を話したら、「そう」と言ってカップに視線を落とす。

「でも、大丈夫よ!何度も山を乗り越えて復活してるおばあちゃんだからきっと今回も元気になって戻ってくると思うの」

敢えて明るく言ってる自分に無理を感じていた。

だって、祖母は最近は食事も喉を通らないほど弱っていて、一日のほとんど眠っていたから。

キッチンにいる母にちらっと視線を向けると、聞こえているのかいないのか黙々と私たちに背を向けて買ってきた食材を仕分けしている。

しばらく二人で紅茶を飲みながら、お互いの近況報告をしていたらふと腕時計に目をやった美由紀が「そろそろ行かないと」と小さくつぶやいた。

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